地盤は常に僅かに揺れており、この微振動を常時微動といいます。
常時微動は、風や波浪などの自然現象や、交通機関、工場の機械などの人工的振動など不特定多数の原因により励起された振動です。
常時微動を測定して、地盤固有の振動特性の推定や地盤種別の判定などに利用することができます。
また、構造物の振動を測定することでその振動特性を評価することが可能です。
最近では、常時微動を用いた様々な研究が進み、大地震などの強震時の地表面の最大振動の評価、岩盤斜面の安定性評価などにも利用され、その結果は地盤ゾーニングなどに使われ防災マップ作成にも利用され始めています。
断層の破壊運動により地震波が生成され、私たちの足元の地盤を震動させるまでには、震源特性、伝播特性、そして地盤特性などの影響を受けています。
特に地表近傍の地盤は、地震波の伝播速度・密度が大きく低下するために地震動振幅が大きく増幅されます。
そして、その周波数に対する増幅特性(周波数特性)は、地質環境に大きく依存しています。
松永ジオサーベイでは、特に建築・土木に重要な工学的基盤や地震基盤までを対象に調査サービスを提供しています。
地盤での測定は、地表設置型地震計を地表面に十分安定した状態で設置します。
孔中用地震計は、層境界や支持層面までの掘削後、地表と孔中の同時測定を行い、地盤の卓越周期や地中の増幅特性を求めます。
従来は、固有周期1~5秒程度の地震計を利用することが多かったのですが、最近では長周期振動特性把握のため、ブロードバンド長周期地震計の利用が増加しています。
さらに、各種検層を併行して実施し、地盤モデル計算を通じて高精度の地盤卓越周期の情報を提供しています。
当社では、20年以上の常時微動調査の実績を有し、全国1000箇所以上の地点で調査を行ってきました。
微動調査フロー
微動のスペクトルの水平成分と鉛直成分の比(H/V)は、地盤表層部のS波地震応答に近似することが知られています。
これは、比をとることにより微動の発生源の影響を取り除く効果があるためとされています。
下図は東京湾岸部で行われた微動の観測結果ですが、工学的基盤までの深度が異なる箇所でH/Vを比較すると、その深度の大きい箇所ではH/Vスペクトルのピーク周期が長周期側にシフトしていることが分かります。
微動の長周期成分を観測することで、深部の地質構造の様子が把握できます。
下の例では、工学的基盤までの構造をモデル化して多重反射理論で地盤の周波数特性を計算した結果を青線で示しています。
これに対し、地震基盤までのモデルによる結果を赤線で示しています。
その結果、地震基盤までの構造による地盤増幅特性のピークが周期1秒以上の範囲に出現してくる事が分かります。
こうした特性は、長周期成分まで十分に感度特性を有する地震観測システムによる計測の重要性を示しています。
中央防災会議では日本全国の地震基盤の上面深度図を公表しています。
下図は、関東・東海~関西地方での分布を示しています。
関東平野、濃尾平野、大阪湾周辺に厚い堆積層の分布が見えます。
四日市市地盤構造例から算出した1次固有周期は7秒以上を示し、長周期側で共振する地盤であることを示しています。
上の例の様に、日本全国の1次固有周期の分布を示したものを下に示します(中央防災会議資料)。
分布図からは堆積物が厚く覆っている地域では固有周期が長くなっています。
当社では、調査目的に応じて様々な地震計を用意しています。
2011年度、新たにランチボックス型地震計・記録器一体型長周期地震観測システムを開発しました。
ハンディーな筐体に、周期10秒の地震計、記録器、GPS刻時装置を内蔵したシステムです。
微動観測にも適用が可能です。